2007年09月24日
白い壷story

いつもの日曜日。
そう、あなたもよく知っているふつうの日曜日よ。
私は海辺を歩いていたの。
季節は冬だから、ただただ歩いていただけ。
そうしたら、海の上に美しい白い壷が浮かんでいるのが見えたのよ。
その風景がとても美しくて、その風景を楽しんでいたの。
そうしたらね、少しずつ白い壷が私に近づいてきたのよ。
近くで見ると、信じられない美しさだったわ。
きっと、どこかの国の宝物じゃないかしら。ええ、きっとそうよ。
私、いままでは何とも思わなかったのに、突然、その壷が欲しくてたまらなくなったのよ。
それで、もう目の前まで来ていたその壷に手を伸ばしたの。
そうしたら、その壷は私の手をかすめて、また私から遠ざかっていってしまったのよ。
少しずつ遠ざかって、またさっきの美しかった風景に帰ってしまってたわ。
だからね、私、その風景をまた楽しんで帰ったのよ。
もう、それほどには欲しくないのよ。
近くにあった時はあれほど欲しかったのに、もうなんとも思わないのよ。
悲しくなんか無いのよ。
むしろ穏やかな心になって、ほっとしてるのよ。
可笑しいでしょ。
--------------------------------------------------------------------------------
なんでもない日曜日。
そうあなたもよく知っている、いつもの日曜日の事よ。
私ね、海を歩いていたのよ。
季節は冬でしょう?
だから、何て事は無く、ただただ歩いていたのよ。
そうしたら、波間に白い壷が浮かんでいるのが見えたの。とても綺麗な壷。
「ああ、美しい壷が浮かんでいるわ」と思って、眺めていたの。
そう、ただ空気を見つめるような気持ちで見ていたのよ。
ただ、そこにあるものとして。
そうね「壷の浮かぶ風景」って絵を見ている感じだったかしら。
どれくらいそうしていたのかしら。
私にも分からないのだけれど、とても良い時間だったわ。
気がつくと、あの白い壷が私の足下にね、流れ着いていたのよ。
どうしてかしらね。
だからね、また海に戻してやったのよ。
きっと、あの美しい風景をたくさんの人が見てくれるでしょう?
とても幸せな気持ちになるわ。
ねえ、そう思わない?
-----------------------------------------------------------------------------
なんでもない日曜日。
そう。昔からよくある、あなたも知ってるいつもの日曜日の事よ。
私は海を歩いていた。
今は冬だから、ただただ波打ち際を歩いていただけ。
そう。ホントに何て事は無くね。
そうしたら、綺麗な白い壷が波間を漂っているのが見えたの。
とても綺麗な白い壷。
きっと外国から流れてきたのね。
なんだかとてもその壷が欲しかったの。
どうしても欲しくて、冬の海に足をつけて、手を伸ばして必死で取ろうとしたのよ。
流木なんかも拾ってね、どうにか壷に届かないかと、それはもう、死にものぐるいで手に入れようとしてたの。
でもね、悲しい事に、私が取ろうとすればするほど、白い壷はどんどん遠ざかってしまうのよ。
そして、もう白かったのか、壷だったのかさえ分からないほどに遠くへいってしまってね。
そう、なんてことない日曜日だったのに、とても悲しい日曜日になってしまったのよ。
もうすぐ其処まで、手が届きそうなところまで来ていたのよ。
なのに、なぜ私のところへあの壷は来なかったんだろうね。
どうしてなんだろうね。
あの白い壷はどこへ行ってしまったんだろうね。
-------------------------------------------------------------------------------
白い壷は沖縄の久高島に伝わる昔話をヒントにしたお話です。
村の男が海辺で白い壷を見つけますが、近寄れば遠ざかり、離れれば近寄るという不思議な壷の話。
心を清めたときに初めて壷が自ら手元に入ってきます。
壷の中には5穀が入っていて、沖縄に5穀が伝わったと言うお話です。
この話が伝えようとするものは、人間の生き方なんでしょうね。
欲を捨てて、今に感謝する事ができれば、壷は自ずとやってくるのかもしれません。
Posted by ナオミ・キャンベル(缶) at 14:03│Comments(0)
│オキナワ雑感